地下数千メートルの世界において、泥水は単なる脇役ではなく地下資源の開発を支える欠かせない存在です。
その役割と地下資源開発との深い関係についてご紹介します。
泥水の基礎知識
■でいすいと読む理由
「泥水」と書くと、一般的には「どろみず」と読みます。辞書には「泥が多く混じった水」と記載されていますが、エネルギー資源開発業界では、この「どろみず」とはまったく異なる意味を持つ専門用語として、『泥水(でいすい)』と読みます。業界における泥水は、単なる濁った水ではありません。目的に応じて化学薬品などを加えて人工的に作られたものであり、一種の化学製品といえます。地面を掘り進めるにつれ変化する地質に応じて調整する必要があり、深い地層を掘削するために欠かせない技術製品として位置づけられています。
■使用場面
泥水は、もともとは石油を掘り出す業界(石油鉱業界)の専門用語です。現在では、石油、天然ガスおよび地熱などのエネルギー資源を探すための深い井戸を掘る現場で使用されます。また、温泉や水井戸の掘削や、巨大地震の発生メカニズムを研究するための科学掘削、さらには、土木・建設分野(基礎工事やシールド工事)の現場でも活用されており、地面を深く掘る場面には欠かせない存在となっています。
地下資源(石油)と掘削について
ここでは、石油を例に地下資源と掘削について、ご紹介します。
■石油が生まれる仕組み
石油は地下の大きな空洞に溜まっていると誤解されがちですが、実際には地下深くにある岩石の目に見えないほど微細な隙間や割れ目に溜まっています。実は身近なところにある石にも、顕微鏡で見ると小さな隙間や亀裂が確認できます。石油もそのような隙間に染み込むように存在しています。
海底に沈んだプランクトンなどの生物の死骸は、土砂に埋もれて地中深くへ沈み込みます。
その後、気の遠くなるほどの長い年月と高温・高圧の環境によって、埋もれた土砂は岩のように固く圧縮され、その岩石の隙間で生物の死骸は石油へと姿を変えていきます。
■石油が動き溜まる仕組み
石油は液体であるため、つながった隙間があれば岩石の中を移動できます。たとえば、乾いた砂を詰めたコップに水を注ぐと、水が砂の粒の隙間を通って下へ染みていくようなイメージです。 一方、地下には時代ごとに異なる性質を持つ地層が重なっています。石油は圧力の低い方向、つまり上へ向かって移動します。途中に隙間のない粘土層があると、そこで移動が止まり、その下の隙間の多い地層に溜まります。特に、その地層が砂岩で、伏せたお椀のような形(背斜構造*1)をしていると、大量の石油が溜まりやすくなります。
*1 背斜構造:地層が横からの圧力で曲げられ、山形に盛り上がった部分

石油が溜まる地層のイメージ
■石油の存在条件と掘削メカニズム
石油が地下に存在するには、いくつかの条件がそろっている必要があります。
- ・石油を生成した根源岩があること
- ・その上に石油が溜まる貯留岩があり、根源岩と隙間がつながっていること
- ・石油を閉じ込める不透過層(キャップロック)が上にあること
- ・地質構造が背斜構造など、石油が溜まりやすい形をしていること
このいずれかが欠けていると、石油は地中に溜まらず産出は期待できません。そのため、石油が採れる地域は限られており、資源として非常に貴重です。
では、条件がそろった場所から、どうやって石油を取り出すのでしょうか?
まず地質調査を行い、背斜構造の有無などを調べます。見込みがあれば、深さ数千メートルの井戸を掘削します。この石油の井戸のことを「坑井(こうせい)」と呼び、その掘削に使用されるのが「リグ」と呼ばれる大型の掘削機です。リグには強力なモーターが搭載されており、モーターに鉄管を接続し、さらにその先に「ビット」と呼ばれるものを取り付けて回転させ、地中を掘り進めていきます。ビットは特殊な構造で、岩石や土を効率よく砕きながら地面に穴をあけ地中に潜ってゆきます。

地面を掘るドリルの先端(ビット)
泥水が支える掘削
地面を掘ると掘りくずが発生しますが、これがたまると鉄管との摩擦でモーターに負荷がかかり、掘れなくなってしまいます。そこで活躍するのが「泥水」です。
■泥水の主な働き
泥水はポンプによって鉄管の中に送り込まれ、ドリルビットの先端から井戸内へ噴き出します。その流れで掘りくずを持ち上げながら、井戸と鉄管の間を通って地上へ戻ってきます。地上ではろ過装置によって掘りくずが取り除かれ、泥水は再利用されます。
泥水は、掘りくずを取り除く以外にも掘削中、地下の情報取得やさまざまなトラブルを防ぐ ”縁の下の力持ち” です。
泥水は地下から得られる情報を運ぶ役目も果たしています。地上へ戻ってきた泥水には、掘りくず(地質)、時には油、ガス、地層水などが含まれています。これらを分析することで地下の情報を得ることができます。
また、摩擦で高温になるドリルビットを冷却し、かつ、潤滑剤としての役割も果たします。さらに、地中からのガスなどの高圧な流体の噴き出しを防ぐ役割や、坑井の内壁(坑壁)を保護して崩壊を防ぐという重要な働きも担っています。
■さらに詳しく:
地上へ戻ってきた泥水はろ過され、必要に応じて新しい薬品・材料を加えられ、再び地下へ送られます。その流れは人間の血液に似ています。体温調節や老廃物の排出、情報の伝達を担う血液のように、泥水も坑井全体を循環しながら掘削作業を支えています。血液(泥水)に異常が見られた場合、投薬等の処置をし、体(坑井)の健康状態を保ちます。
掘削中は地下の状態が刻々と変化します。そのため、泥水の状態を常に監視・調整する必要があります。現場には専門知識を持つ泥水エンジニアが常駐し、掘削チームと連携して最適な状態を維持しています。
このように、『泥水(でいすい)』は単なる液体ではなく、掘削現場の安全と効率化に欠かせない重要な役割を持っています。そして私たちの暮らしを支えるさまざまな地下資源の確保や自然災害メカニズムの解明などの一助も担っています。
よくあるご質問
ここでは皆さん方からよくお寄せいただく泥水に関するご質問にお答えします。
地層が山形になるのはなぜですか。
地球の内部は常に変動しています。長い時間をかけて海だったところが山になったり、逆に山が沈んで海になったりします。これを地殻変動といいます。初めは平らだった地層が山形になるのは、その場所が両側から強い力で押されて、真中が盛り上がったためです。
土木工事の連続壁工事やアースドリル杭工事で使用される安定液にはどういう材料が使用されていますか。
安定液に使用される材料は、基材のベントナイト、増粘脱水減少剤のカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)や分散剤のポリアクリル酸ナトリウム系化合物等からなります。これらは精製グレードの違いはありますが、医薬品添加物や食品添加物として認められた成分材料を使用しております。ただし、安全だからと言って地表面に浸透させたり池や河川等に流出させたりしないようにしてください。漏洩した場合は直ちに防止措置を取り除去するようにしてください。
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